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本部御殿手を学んで  

 

兼城賢徳(本部御殿手古武術協会相談役、範士十段)

 

私が上原清吉師に初めてお会いしたのは今から13年前(注:昭和39年)のことである。以前から上原師のことは噂に聞いていて、大謝名に上原清吉という空手の達人がおられるが、この方はなかなか他人には空手は教えていただかないと聞いていた。

私もそれまで十年間も空手を学んでいたので達人がおられるという噂を聞き、是非先生にお会いしてその技を学びたいと思い上原師の門を叩いた。

私は先生にお会いして、平身低頭是非先生の技を教えて下さいとお願いすると、先生は教えるのではなく一緒に研究しようということで承諾をして下さった。翌日いよいよ最初のけいこの日である。先生が、さあ、どこからでもよいから突いてきなさいといわれたので、最初は軽く突いていった。すると先生は、貴方にはケガはさせないから思い切り突いてきなさいといわれたので私は、それ程強いのかと思い全力で突いていくと、先生は私の突きを腹で受け止めた。その時の先生の体はまるで車のタイヤのようでいくら突いても手がはね返ってくる。

そしてつぎからは先生の体の動きが始まり、それからは私がいくら突いても蹴っても先生の体に指一本も触れることはできず、空間を突かされ、蹴らされ、逆に私の体は宙に舞い投げ飛ばされた。

それが終わると次は間接技である。先生の技にかかると私の体はまるで電気にでも触れたように神経にピリピリ突き刺すような痛みと共に身動き一つできない無抵抗の状態になった。私はそのとき、つくづくそれまでの自分の空手に対する認識の浅さと自分の技の未熟さを身をもって知り谷間のどん底に突き落とされた思いであった。

それからは空手を最初からやりなおす気持ちで学んでいくことを決意し、その後は上原師の教えを受けて今日に至っているが技もまだまだ未熟で恥ずかしい次第である。

 

本部御殿の手は琉球王家の「秘伝」として本部御殿に伝わる手であり、上原清吉師は本部朝勇師(按司方ウメー)からその技をうけつぎ、本部御殿手の十二代目の宗家である。

空手は普通受けに始まり突きで終わると言われているが、御殿手は普通の空手の型や構えと違って、あくまでも体の線をやわらかく保ち、逆手を使って相手を倒していく妙技である。

御殿手は常に体の重心を崩さずいつでも体の重心を左右の両足にすばやく移動できるようにし、片方の足はいつでも自由にどこにでも動けるようになり、多人数相手にも対応できるような動きをする。又御殿手には受けがなく、相手の攻撃から身を返しながら手や足を同時に使って相手を攻撃する刀の二刀流のような技もある。又相手にケガさせないで相手を無抵抗にしてしまう技もある。

御殿手は人間の体の弱点や反射神経等も科学的に充分研究され完成された武道であり、常に相手の弱点をとらえ、それを絶対に見のがさない。

御殿手にはまず基本型の元手があり、取手、取手返し、裏返し、こねり手、からみ手、投げ手等いろいろの妙技があり、按司方の舞いの手が奥義である。

武の終局はあらゆる武道が一致するといわれているが、御殿手には剣道、柔道、その他の武道の技がいくらでも秘められており、他の武道とも相対することができる。又御殿手がどのような武器も使いこなすことができることもその表れであると思う。

沖縄の空手が今や世界の空手として発展しつつある今日、空手を志すものとして本場沖縄に誇りをもつと同時に祖先が残して下さったすばらしい技を少しでも多く身につけるよう今後も努力していきたい。諸先輩の御指導をお願い致します。

 


『舞と武 第2回合同研究発表会』パンフレット(昭和52年)より。上記文章は、兼城師範の許可を得て掲載しています。