本部流

日本傳流兵法本部拳法・本部御殿手
Home
最新情報
本部御殿
本部御殿手
本部拳法
流派系譜
入門案内
資料室
資料室について
1. 本部御殿手を学んで
2. 道深し 空手武道
3. 「御殿手」の継承で特訓
4. 女踊り「天川」とその分解
5. 戌の御冠船踊り
6. 踊り子だった唐手家たち
7. 阿嘉直識遺言書
8. 浜千鳥とその分解
9. 唐手の達人達
10. 露国拳闘家
11. 本部朝基後援会
書籍・ビデオ
お問い合わせ
About the Motobu Udun
Motobu Kenpo
Motobu Udundi
Lineage
Dojos
Library
雑踊り「浜千鳥」とその分解
 
 
本部直樹
 
 
琉球舞踊「浜千鳥(チジュヤー)」は、雑踊りの傑作で今日沖縄でもっとも愛され、頻繁に踊られている踊りの一つです。創作時期は不明ですが、明治20年代には那覇の芝居小屋で上演されていました。
 
雑踊りとは、廃藩置県以後に作られた琉球舞踊のジャンルを指す名称で、これに対して女踊りなど王朝時代の舞踊は、古典舞踊や宮廷舞踊と呼ばれて区別されています。しかし、必ずしも雑踊りのすべてが廃藩置県以降に創られたかどうかははっきりしません。
 
もともと雑踊りは、琉球王国時代の「アングヮーモーイ(姉小舞、娘踊りの意)」を起源とするもので、雑踊りという名称自体も明治20年代にはまだありませんでした。琉球王国時代、首里の御殿、殿内では、出産など私的なお祝いの席で踊りが披露されていましたが、そのとき花染め手拭いをかぶり、女衣装を着けて踊った踊りが好評を博し、これがいつしかアングヮーモーイと呼ばれるようになりました。宮廷舞踊が厳格、荘重を特徴とするのに対して、アングヮーモーイは軽快で親しみやすく、廃藩置県後、那覇の芝居小屋で上演したところ、人気を博しこれがいつしか雑踊りと呼ばれるようになったのです1
 
実際、浜千鳥で用いられている手法、例えば、押し手、こねり手、枕手、招き手などは、「天川」や「諸屯」など女踊りで用いられている手法に由来するものがほとんどです。古典舞踊が能の影響を受けて手数を少なくして間(ま)を大切にして踊るのに対して、雑踊りは手数を増やし、賑やかに軽快に踊るという違いがあるだけで、技法的には共通しています。 

玉城盛重先生

 
一般に浜千鳥の作者は玉城盛重先生と言われていますが、はっきりしたことは分かりません。そうでないとする意見もあります。女踊りのほとんどが玉城朝勲作とされてしまったように、作者不明の雑踊りが偉大な舞踊家に帰せられただけかもしれません。しかし、いずれにしろ浜千鳥が玉城盛重先生をはじめとして、多くの舞踊家によって踊られてきたのは事実で、その過程でたくさんのバリエーションができ、今日では浜千鳥も琉球舞踊の流派や会派によって違ったものがいくつも伝承されています。
 
本部御殿手で伝承されている浜千鳥は、本部朝勇先生が大正時代に振り付けたもので、動画で踊られているような一般的な浜千鳥とはいくつか相違があります。上原先生は、朝勇先生の言いつけで、那覇辻町で旧暦の1月20日におこなわれる「二十日正月」の舞踊大会に、この浜千鳥を女装して三名の女性達といっしょに踊ったことがありましたが、舞台をみた観客は、誰もそこに男性が混じっているとは気づかなかったそうです2
 
浜千鳥で使われているこねり手や押し手は、そのまま本部御殿手の取手として用いるとができるくらい、武的な要素が含まれています。本土の柔術が主として相手の肘や手首を極めるのに対して、沖縄の取手は相手の指関節から手首にかけて、手腕部のより末端を攻めるという相違がありますが、指関節を極める時など、浜千鳥のこねり手や押し手の動きがそのまま取手として使えるのです。
 
元来、雑踊りを作った明治時代の舞踊家達は、そのほとんどが没落士族の出身で、彼らは士族の嗜みとして武術も稽古していました。一般には知られていませんが、玉城盛重先生も実は武術をされていました。盛重先生の娘さんによると、盛重先生は、普段から自分は武士だと自覚していて、昼寝なども絶対に横になって寝ることはなく、いつ襲われてもすぐ対処できるようにただ家の柱にもたられてうたた寝するだけだったそうです3。また、盛重先生は朝勇先生のところへ頻繁に訪ねてはよく踊りの手法などについて議論されていたそうですが、こうした議論の成果も本部御殿手の浜千鳥の中に生かされているのかもしれません。
 
 
1. 矢野輝雄『沖縄舞踊の歴史』184頁参照。
2. 上原清吉『武の舞』191頁。
3. 琉球舞踊研究家・宜保栄治郎先生談。
 

 
動画の紹介:「舞と武第七回合同研究発表会」(1990年)より。
 
雑踊り「浜千鳥」。踊り手:漢那七子(紫の会琉舞師場教師)。
 
浜千鳥の分解:上原清吉(第12代宗家)、野崎幸和(教士)。